「ペペッ! また、ゴミ箱をあさったでしょ!」
ママが愛犬のペペを叱っています。
怒る時は容赦がありません。
その姿は、パパでも怖いくらいなので、犬のペペにしたら、そりゃ、腰が抜けるほどだと思います。
ペペもペペです。
それまで大人しく座っていたのに、ママがちょっとトイレに行った隙に2階にトコトコと上がって悪さをするのですから。
「まったく、何度言ってるでしょ、ティッシュは食べ物じゃないのよ!」
クレート作戦、発動!
我が家では、クレートをお仕置き部屋として使っています。
ペペはクレートに入るのをとても嫌がったので、悪いことをした時、クレートに入れて自由を奪ったら、「言うことを聞くのでは?」と思って始めた作戦です。
この日のゴミ箱あさりも当然、クレート作戦の発動です。

クレートと寝床とおもちゃ
よくもまぁ毎回怒られる度にクレートに入れられちゃっているのになぜ何度も同じことでするのでしょうか。
今では「ペペッ!」とママがにらんだだけでもクレートに中に入るくらいです。
それでもちっとも直らない。
パパにはよくわかりません。
ペペがクレートに入れられて3時間? 4時間? それくらい経った頃でしょうか、ヒマになったのか、クレート中でペペが動き始めました。
器用にクレートの中で身体をねじってグルグルと動き回るからクレートもガタガタと揺れます。
けっこう激しくクレートが揺れてるなあと思った瞬間……。
バァァァーーン!
ペペが、クレートの格子扉を力任せにこじ開けて出てくるではありませんか。
この怪力にパパもママもびっくり。
まさに引田天功顔負けのイリュージョン。
自力で脱出したペペは、いわゆるドヤ顔で、「出でやったぜ、へへーん」という悠然と歩くのです。
これきっかけにママもエスカレート。
今度はクレートに布をかけて辺りを見えなくさせました。
ところが、またもやクレートの扉をこじ開けて出てくるペペ。
ママは、キィーーーッとなって、こじ開けられないよう扉を壁側につけ、さらにクレートが動かないように固定、その上に布をかけるという念の入れよう。
「これで、よしっと!」
なにが「よし」か、わかりませんが、知らない人が見たら動物虐待って思うかも……。
え!クレートって本来そうやって使うの!?
懲りずにペペも悪いことをするので、ほぼ毎日クレートに入れられていました。
お留守番の時もクレート、寝る時間もクレート、家族の誰かが家にいる時だけは、唯一出してもらえるのですが、悪さをするとその時間もクレートでした。
これ、犬のしつけ教材「イヌバーシティ」の受け売りですが、本来、クレートは犬にとって安心できる場所らしいです。
しかも、犬のしつけ訓練時期にはクレートを使うそうで、クレート内でしっかり休ませ、飼い主と遊んだり、しつけをしたりする時だけ出します。
こうすることで、飼い主との時間を大切なものにし、一方の飼い主は、クレートから出した時、犬に集中することが重要だそうです。
なるほど。
ペペは毎日のように悪さをするから毎日のようにクレートに入って、それは、可哀想なくらい入っていますが、結果的にお仕置き部屋のクレートで休んで、出ている時は家族と過ごすという教材どおりのことをしていたのかもしれません。
教材では、飼い主が犬のために我慢する生活はよくないといいます。
例えば、我が家ではこういう我慢をしています。
- ペペが誤飲してはいけないので雛人形を出さなくなった
- 2階に上がらせないために柵をした(←今はやっていません)
- なるべくペペをひとりにさせないよう誰かが一緒にお留守番をする
ちゃんとしつけができれば、こういう我慢を飼い主がしなくていいというのです。
褒められて伸びるタイプだワン!
さらに我が家では、しつけとは厳しくするものだと思っていましたが、大切なのは、「褒める9割、叱る1割」が基本。
確かに「しつけ=怒る」と思っていました。
本来、「しつけ=ルールを守らせる」ことなので、だから、怒鳴ったりしなくてもしつけはできるんです。
教材の「イヌバーシティ」を見てから、我が家ではルールづくりを始めました(まだひとつですけど……)。
それは、「家族が食事をしている時、ペペは自分の寝床で待つ」(詳細は第3話を参照)なんですが、以前ならば、「ペペ、いいか、動いちゃダメだ!」と強い口調で待てを命令するところを、今では、「ちゃんと待てて偉いな、もう少し待ってて」と優しく伝えるようになりました。
そう声を掛けると、ペペは寝床でちょこんと座りながら尻尾をフリフリして、ママから「おいで」と呼ばれるのを待っています。
大事なのは伝え方
また、こんなこともありました。
どうも舐め過ぎたせいか、ペペの足の毛の一部が、剥げてしまっていたのです。
これ以上、舐めさせないようにハンカチで足を縛りましたが、それでもペペは足を舐めようとするのです。
パパは手で足を覆い、舐めさせないようにしました。
いつもならここでと厳しい口調で「ペペ!」と言うところですが、「舐めちゃうと治らないから」と諭します。

パパの顔のじっと見るペペ
ペペが顔を見上げたとき、パパは何も言わずに目をキッとだけさせました。
しばらくの間、ペペは、パパの顔をじっと見ていて、その後、身体を丸くして足を舐めるのをやめました。
きっと足を舐めてほしくないというパパの気持ちを理解してくれたのです。
理想の犬になるための道程はまだ遠いですが、少し、パパもママもペペとの接し方がわかるようになったのかもしれません。
それから週末だけは、家族と一緒に寝てもいいことにしました。
「ベッドがおしっこ臭くなるから嫌だけど……」というママを説得しました。
大切なのは褒めること、叱るほうも嫌な気分になるし、どうせなら褒めていい子にしたほうがいいじゃん。
いよいよ、明日から訓練の始まりです。
▼第5話につづく